ダクトとはどんなもの?プロがわかりやすく徹底解説します!
飲食店やオフィスビルなどに必ず設置されているダクト。普段は給排気口しか見えないため、詳しく全貌を知っている方は意外と少ないです。ダクトにはさまざまな種類があり、その役割や形状、その他特徴はそれぞれ異なります。
この記事ではダクト工事のプロが知っていると納得できるダクトの専門的な情報を、入門編と応用編に分けて解説。飲食店やオフィスビルのオーナー様、建設会社や空調設備会社の方など日頃ダクトに関わりがある方から、建築系の学生さんや新人の職人さんまで、皆さんがわかりやすいようまとめました。
目次
〜ダクトとは?入門編〜
ダクトとは?その役割と目的
ダクトとはわかりやすく一言でいうと「空気の通り道」です。換気と空調を目的とし、気体を運ぶための管状の設備のことを指します。冷暖房などの空調システムから送られる空気を室内に送り込む、逆に室内の空気を室外に排気して新鮮な空気と入れ替えるための配管や設備の総称をダクトといいます。
配管との違い
一般的に空気だけでなく水やガス、油など、さまざまな流体を通すものを配管といいます。一方で、ダクトは前述のとおり給排気などを目的として気体のみを通す設備です。とはいえ、ダクトと一口に言っても、以下のようにさまざまな種類があります。
知っておきたい主なダクトの種類
給気ダクト(SAダクト)
SAとは「Supply Air」の略で、新しい空気を室内に供給するダクトです。空調設備から供給される暖かい・涼しい空気を室内に送り込むために配置されます。屋外→外気ダクト→空調設備→給気ダクト→室内という流れで新しい空気が供給されます。
還気ダクト(RAダクト)
「Return Air」つまり古い空気を還気(空気を戻す)ためのダクトを指します。給気ダクトとは逆で、室内の空気を空調設備に送り込む役割があります。室内→還気ダクト→空調設備→排気ダクト→屋外という流れで空気が通ります。
外気ダクト(OAダクト)
OAとは「Outdoor Air」もしくは「Outside Air」の略で、新しい外の空気を空調設備に取り入れるためのダクトのことを指します。さらに外気ダクトには給気ファンを用いて外気を取り入れる「強制給気」と、自然に空気を取り入れる「自然給気」の2種類があります。
排気ダクト(EAダクト)
EAとは「Exhaust Air」のことで、空調設備に送られた古い空気を屋外に排出するダクトのことです。排気ダクトは一般的なビルなど空調設備がある施設のほか、飲食店や工場など煙や臭い、有害なガスが発生する、もしくは高温や低温になる施設にも使われています。
排煙ダクト(SEAダクト)
SEAとは「Smoke Exhaust Air」の略で、煙を排出するためのダクトのことを指します。火災発生時に作動し、室内の煙を外部へと強力に排出します。火災警報器やスプリンクラー、シャッターと連動して動くよう設定されていて、万が一停電が起きても自己発電装置によって作動可能です。
プロの知識
ダクトの役割は、空気の流れを読めばわかる!
給気ダクトとは空調設備から室内に新しい空気を送り込むためのダクト、還気ダクトは逆に室内から空調設備に古い空気を引き込むためのダクトです。いずれも快適な室内環境を維持するためには必要不可欠なダクトで、どちらか一方だけでは不十分です。
さらに外気ダクトによって外の新しい空気が空調設備に送り込まれ、逆に排気ダクトで古い空気が外に排出されるという仕組みになっています。
ダクトの役割は空気が流れる方向によって違ってくるということを頭に入れておくと、それぞれのダクトがどのようなものなのか?を理解しやすくなります。
なお、室内の汚れた空気を排出する排気ダクトは特に飲食店などでは重要になってきます。こちらの記事では排気ダクトの種類や特徴について、さらに詳しく解説しています。
ダクトの形状とそれぞれの特徴
丸(スパイラル)ダクト
管の形状によってもダクトの特徴は異なります。丸ダクトとはその名の通り管の形状が円形もしくは楕円形になっているダクトのことを指します。角がないため空気が流れやすいというのが利点です。ダクト内の風速20m/s以下、静圧490Pa以上の高速ダクトに使われるケースも多いです。なお、丸ダクトに板状の鋼材をらせん状に巻いたものはスパイラルダクトと呼ばれます。
角ダクト
管が四角い形状をしているダクトのことを指し、「矩形ダクト」とも呼ばれています。四角形になっていることで収まりが良くなるため配管しやすいというのがメリットです。一方で角があるため丸形ダクトと比較すると空気が流れにくいというデメリットもあります。風速15m/s以下、静圧490Pa以下の低速ダクトに使われることが多いです。
オーバルダクト
オーバルダクトとは管が「O」のような形をしている楕円形状のダクトです。丸ダクトの空気の通りやすさと角ダクトの収まりの良さという、両方の良いとこ取りをしたようなダクトです。そのため、特にスペースが限られている場所で使われます。
フレキシブルダクト
管がじゃばら構造になっているダクトのことを指します。自由に屈折することができるため、空調機器の連結部に使われることが多いです。振動や騒音が発生しにくいというメリットもあります。
ダクトの基本的な構造とは?
ダクトは送風時のエネルギーロスの軽減を考えると、なるべくまっすぐ設置するのが理想的です。しかし、設置箇所のスペース的な制約やダクトの分岐などの要因で、実際の施工時には継手を使って柔軟に対応する必要があります。多くの場合、ダクト単体だけで施工することはありません。「ダクト+継ぎ手」というのが基本的な構造となります。
ダクトの構造で重要な継手(つぎて)とはどんなもの?
継手とは配管同士をつなげる部品です。たとえば「Y」の字型など枝分かれしている継手を使用すれば、空気を分岐させることができます。また、「L」の字型の継手を用いれば、90度に配管の方向を変えることが可能です。このようにダクト工事では使用する箇所によって継手を使い分けることが非常に重要となってきます。
プロの知識
ダクトに関する部品はこんなにある!
ダクトまわりの部品には継手以外にも丸ダクトの接続部に巻いて強度を補う「ダクトテープ」、ダクトを組み合わせたときに折り曲げ部に使う「はぜ」、ダクトの分岐部分の空気の流れをコントロール・維持する「チャンバー」、ダクトの接続部分から空気が漏れるのを防ぐ「ダクトパッキン」、ダクトの末端部分を閉鎖するための鉄板「閉止板(メクラ)」など、さまざまなものがあります。私たちはこうした部品も使いながら、配置箇所に合わせてダクトを組んでいくのです。
ダクトに使われる多種多様な材質
亜鉛メッキ鋼板
鋼板の表面に亜鉛メッキを施すことで、腐食やサビ、塩害を防ぐことができます。亜鉛メッキ鋼板は非常に耐久性に優れていてかつ安価であり、丸ダクトや角ダクトなどバリエーションも豊富なため、多くの場所に使われています。
ステンレス鋼板
ステンレスは腐食や傷に非常に強い素材です。室内はもちろん、ダクトがむき出しになっている工場や屋外など、過酷な環境下でも使われています。亜鉛メッキと比較すると高価になりますが、やはり形状のバリエーションが豊富で自由度が高い配置が可能です。
ガルバニウム鋼板
ガルバニウム鋼板はアルミニウムと亜鉛の合金メッキが施された鋼板で、亜鉛メッキ鋼板よりもさらに耐久性が高くかつ見た目が美しいため、住宅の外壁などにも使われているほどです。ステンレスよりもコストが安いですが、傷がつきやすいのが難点といえます。
塩ビコーティング鋼板
塩化ビニルをコーティングした鋼板です。腐食に強く、耐薬品性も高いため、病院や薬品工場などで使われます。ただし、プラスチックであるため高温や炎にさらされると変形したり炎上したりする危険性があります。
〜知っておきたいダクトの設置!応用編〜
ダクト工事の主な種類とは?
空調ダクト工事
その名の通り空調設備から室内に空気を送り込むためのダクトを施工する工事です。基本的にダクトから室内の吹き出しファンまでをダクトでつなぐ作業になりますが、ダクトが長い場合は途中で別途吹き出しファンを設置して風を送り込むことがあります。
換気ダクト工事
換気のためのダクトを施工する工事のことです。室内側に給気口、排気側に排気口を設置してダクトをつなげ、さらにストレートシロッコファンを設置して換気がスムーズにできるようにします。特に煙や臭いが発生する飲食店では必須の工事です。
排煙ダクト
火災時が発生したときに煙を排出する排煙ダクトを施工する工事です。排煙ダクトは消防法にもとづいて設置しなければなりません。一般的なダクトと比較すると圧力が高く、風速も早いため、強力に煙を排出することができます。
ダクトの設置で気をつけること
できるだけ真っ直ぐに、最短ルートで設置しよう
ダクトが曲がりくねっている、あるいは距離が長いと、どうしてもエネルギーロスが生じて空気が流れにくくなってしまいます。私たちはダクトをなるべくまっすぐに、最短距離で配置するよう心がけています。「直線」を意識することで、スッキリとして空気の流れも良くなります。
極端な曲げ方はやめよう
ダクトを曲げると空気抵抗で振動や騒音が発生するという弊害もあります。そういった意味でもなるべくダクトの拡大や縮小、曲がりはないに越したことはありません。スペースの制約などでどうしても曲げなければならない場合は、なるべく緩やかにするのがコツです。
勾配には気をつけよう
ダクトの勾配の付け方を誤ると外部から雨水が流れ込み、ダクトを介して空調設備に侵入して漏電や火災が発生するおそれがあります。また、結露や湿気が発生して空調設備の故障や建物の腐食、水漏れなどにもつながります。私たちはそのようなことがないよう、しっかりと勾配も計算した上でダクトを施工しています。
プロの知識
以上のように、ダクト工事は一歩間違えると火災や漏電などの事故や空調設備の故障や水漏れにつながる、騒音や振動が発生するなどのリスクが伴います。これらのトラブルを防ぎ、かつダクトの能力を最大限引き出すためには、専門的な知識や技術が必須です。
プロがダクトを施工すれば快適で安心な室内空間が実現できますので、工事を検討されている場合は実績が豊富で信頼できる施工会社を選びましょう。
〜まとめ〜
一口にダクトといっても、用途や種類、設置する場所などによって使い分けが必要で、工事を行う際のポイントも異なります。自己流で設置や修理をすると破損や重大な事故につながり危険な状況を招く場合もあるので、必ずプロにご相談ください。
広積空調工業なら設計・製作・施工まで自社一貫対応だから、低コストで高品質なダクト工事を実現します。実績も豊富で、国家資格を有する職人が施工するので、安心感が違います。東京、千葉、埼玉、茨城でのダクト工事なら私たちにお任せください。