ダクト工事の正しい勘定科目を専門家が解説

ダクトの新設や修理を行った際、経理担当者やオーナー様を悩ませるのが「勘定科目の選択」です。
その工事費用は、一括で経費にできる「修繕費」なのか、数年かけて償却する「建物附属設備(資産)」なのか。
この判断一つで、その期の節税効果や決算内容が大きく変わります。
本記事では、広積空調工業が実務的な視点から、税務上の判断基準となる「金額の壁」や「原状回復」の考え方をわかりやすく解説します。
仕訳の具体例や、税務調査で差がつく見積書の受け取り方まで、経理処理をスムーズに進めるためのヒントが満載です。
目次
ダクト工事の基本的な勘定科目は?
ダクト工事の勘定科目は、その工事が「新設」なのか「修理」なのかによって異なります。
基本的には、建物と一体となって機能する設備であるため、建物そのものとは区別して処理するのが一般的です。
ただ「修理」が必要なダクトにおいて、よほど小さな穴など出ない限り、ほとんどの場合で交換の方が安く済みます。
勘定科目においては、「修理」も「交換」も同様の扱いとなります。
原則は「建物附属設備」として計上
新しくダクトを設置したり、既存のシステムを全面的に刷新したりした場合は、**「建物附属設備」**という勘定科目を使用します。
ダクトは建物に固定され、排気や空調という機能を付加するものであるため、会計上は「資産」として扱われます。
この場合、工事費用を一度に経費化するのではなく、定められた耐用年数に応じて数年間にわたり分割して費用(減価償却費)を計上していくことになります。
メンテナンスや部分補修、交換なら「修繕費」
故障したファンの交換、ダクトの穴埋め、定期的な清掃、古くなった一部の配管交換などは**「修繕費」**として処理できます。
修繕費の最大の特徴は、その期の経費として「一括で計上できる」点にあります。
ただし、修繕費として認められるのは、あくまで「原状回復」や「通常の維持管理」を目的とした工事に限られます。
同じ修理でも、性能を劇的に向上させるような内容は資産とみなされる可能性があるため注意が必要です。
什器備品や構築物との違い
よく混同されるのが「什器備品」や「構築物」です。
什器備品は、移動が可能な厨房機器や家具などを指します。
一方、ダクトは建物と密接に結合しているため、通常は什器備品には当たりません。
また「構築物」は、門や塀、アスファルト敷きの駐車場など、建物以外の工作物を指します。
ダクトは建物の一部として機能するため、特別な理由がない限りは「建物附属設備」を選択するのが最も適切で安全な判断と言えます。
【重要】「修繕費」として一括経費にできるケース
ダクト工事の費用を一括で損金(経費)に算入できれば、その分の税負担を軽減できます。
税務上、修繕費として認められるにはいくつかの明確な基準が存在します。
金額による判定(10万円・20万円の基準)
一般的に、1回の工事費用が10万円未満であれば、内容を問わず「消耗品費」や「修繕費」として一括経費処理が可能です。
また、一括償却資産として扱える20万円未満の工事であれば、3年間で均等償却する簡便な処理も選択できます。
まずは領収書や見積書の合計金額を確認し、これらの「金額の壁」をクリアしているかをチェックすることが経理処理の第一歩となります。
「維持管理・原状回復」であれば金額を問わず修繕費
金額が20万円を超えていても、その工事が「壊れた箇所を元通りにするため(原状回復)」や「今の性能を維持するため(維持管理)」であれば、原則として修繕費になります。
例えば、経年劣化によるダクトの清掃費用や、故障したモーターを同等スペックのものに交換する費用がこれに該当します。
この場合、たとえ100万円かかったとしても、価値を高める工事でなければ経費として認められる可能性が高いです。
30万円未満の特例(中小企業者等の少額減価償却資産)
青色申告をしている中小企業や個人事業主であれば、**「少額減価償却資産の特例」**を活用できます。
これにより、取得価額が30万円未満であれば、その全額を取得した年度の経費として一括で落とすことが可能です(年間合計300万円まで)。
ダクトの一部改修や小規模な換気扇設置など、30万円ライン前後の工事を行う際は、この特例が適用できるかどうかを確認することで大きな節税効果が得られます。
「資産計上(資本的支出)」が必要なケース
「資本的支出」とは、工事によってダクトの寿命が延びたり、明らかに以前より性能が向上したりする場合を指します。
この場合は、経費ではなく資産として扱う必要があります。
ダクトの増設や性能向上(グレードアップ)
これまで無かった場所にダクトを新設したり、排気能力を大幅にアップさせるために太い管へ交換したりする工事は、資産計上の対象です。
例えば「最新の消臭装置を後付けした」「店舗拡張に合わせて排気ルートを増やした」といったケースは、建物の価値を高める行為とみなされます。
これらは単なる修理の域を超えているため、修繕費ではなく建物附属設備として資産に計上しなければなりません。
建物の価値を高める「資本的支出」とは
税務上、修繕費と対比される言葉が「資本的支出」です。
客観的に見て、その工事によって建物の「利用価値が高まった」あるいは「耐久性が増した」と判断される内容を指します。
例えば、ダクトの素材をより高価で耐火性の高いものへ全交換した場合などは、元の状態よりもスペックアップしているため資本的支出に該当します。
この区別は税務調査でも厳しくチェックされるポイントであるため、慎重な判断が求められます。
耐用年数についての考え方(詳細は別記事参照)
資産として計上した場合、その後の「耐用年数」が重要になります。
建物附属設備としてのダクトは、その構造や用途によって償却期間が決められています。
適切でない耐用年数を選択すると、毎年の減価償却費の計算が狂い、修正申告が必要になるリスクもあります。
耐用年数の具体的な年数や計算方法については、[こちらの別記事(ダクト工事の耐用年数解説)]で詳しくまとめていますので、あわせてご確認ください。
https://kohseki-tsopro.co.jp/category/column/805/
「修繕費」か「資産」かのフローチャート・比較表
| 判断のポイント | 修繕費(収益的支出) | 建物附属設備(資本的支出) |
|---|---|---|
| 工事の目的 | 原状回復・維持管理 | 性能向上・価値増加・寿命延長 |
| 金額基準 | 20万円未満(または10万未満) | 原則20万円以上 |
| 周期 | おおむね3年以内の周期で行われる | 不定期、または長期間にわたる |
| 具体例 | ファンの交換・清掃・穴埋め修理 | ダクトの新設・延長・消臭装置追加 |
| 特例の活用 | ー | 中小企業なら30万円未満まで一括OK |
形式的判定と実質的判定の使い分け
まずは金額で判断(形式的判定)し、次に工事の中身(実質的判定)で判断します。
金額が大きくても、明らかに原状回復であれば修繕費です。
逆に、金額が小さくても新設であれば資産となります。
このように「金額」と「内容」の二段構えでチェックすることが、税務ミスを防ぐポイントです。
迷った時の「60万円未満」または「前期末取得価額の10%以下」ルール
もし判断に迷うグレーゾーンな工事であれば、**「60万円未満」または「その資産の取得価額の約10%以下」**であれば、修繕費として処理できるという実務上のルール(継続適用が条件)があります。
多額の費用がかかるダクト改修において、この「10%ルール」を知っておくと、経理処理の選択肢が広がり、スムーズな決算が可能になります。
仕訳の具体例:ケース別書き方ガイド
実際の帳簿付けで使える仕訳例を紹介します。
※消費税は簡略化のため税込で記載。
新規でダクト設備を導入した場合(資産計上)
150万円をかけて厨房に新しい排気ダクト一式を設置し、代金を振り込んだ場合。
- (借方)建物附属設備 1,500,000 / (貸方)普通預金 1,500,000 この後、決算時に耐用年数に応じた「減価償却費」を計上していきます。
ダクトの清掃やファンのみを交換した場合(費用処理)
古くなったファンの交換と、ダクト内部の油汚れ清掃で15万円支払った場合。
- (借方)修繕費 150,000 / (貸方)普通預金 150,000 20万円未満であり、かつ維持管理目的であるため、その期の経費として全額処理します。
故障による緊急の復旧工事を行った場合
災害や不慮の事故で壊れたダクトを元通りに直すために50万円かかった場合。
- (借方)修繕費 500,000 / (貸方)普通預金 500,000 金額は50万円と大きいですが、「原状回復」が目的であれば、修繕費として計上することが認められます。
経理処理をスムーズにする見積書のチェックポイント
正しい勘定科目を選ぶためには、業者から受け取る見積書の書き方が非常に重要になります。
「工事一式」を避け、内訳を明確にするメリット
見積書に「ダクト工事一式 100万円」とだけ記載されていると、税務署から「これは資産ではないか?」と疑われた際に反論が難しくなります。
内訳を「部品代(ファン・管)」「清掃費」「工賃」「産廃処理費」と細かく分けてもらうことで、「清掃費の部分は確実に修繕費」といったように、一部を経費として切り分けやすくなるメリットがあります。
撤去費用と設置費用を分ける重要性
既存のダクトを撤去して新しいものに変える場合、撤去にかかった費用は「固定資産除却損」や「修繕費(解体費用)」として計上できる場合があります。
これらが設置費用と合算されていると、全額を資産計上しなければならなくなり、損をすることがあります。
業者にはあらかじめ「撤去分と新設分の金額を分けてほしい」と伝えておくことが、賢い節税への第一歩です。
まとめ:ダクト工事の税務判断は正確な内訳把握から
ダクト工事の勘定科目は、基本的には「建物附属設備」か「修繕費」の二択です。
判断に迷った際は「金額の壁」を確認し、次に「価値が高まったか、単なる修理か」という視点で工事内容を精査しましょう。
私たちのような専門業者であれば、経理処理を考慮した詳細な見積書の作成も可能です。
正しい税務判断を行い、適切に節税しながら、安全な店舗運営を維持するためにも、まずは信頼できる業者への相談をおすすめします。













