【店舗向け完全ガイド】ダクト交換のすべて

2025年07月24日(木)

「厨房の吸い込みが悪くなった」「異音がするが、修理で直るのか?」――。
飲食店にとって、排気トラブルは営業停止に直結する死活問題です。
しかし、実は無理に修理を繰り返すよりも、思い切って「交換」してしまう方が、結果的にコストも工期も抑えられることをご存知でしょうか。
本記事では、店舗ダクトのプロである広積空調工業が、ダクト交換と工事の違い、機器の寿命目安、費用相場を詳しく解説します。
居抜き物件の開業前チェックや、火災リスクを回避するためのメンテナンス術など、店舗を守るための「正しい判断基準」をお伝えします。

店舗における「ダクト交換」と「ダクト工事」の違い

業界用語として混同されやすいですが、「交換」と「工事(新設)」には明確な違いがあります。
これらを正しく理解することで、業者への依頼もスムーズになります。

ダクト交換は「既存設備の刷新」

ダクト交換とは、現在使用している換気扇(排気ファン)やダクト管を、新しいものに取り替える作業を指します。
ルート自体は変えず、劣化したパーツを最新の機器にアップデートするイメージです。
店舗の営業に支障をきたす「吸い込み不良」や「故障」の解決策として、最も一般的かつ現実的な対応がこの「交換」作業となります。

ダクト工事は「新設・ルート変更」を指す

一方で、ダクト工事は「何もない場所に新しく設置する」または「排気ルートを根本から変更する」大規模な施工を指します。
例えば、厨房のレイアウト変更に伴うダクトの延長や、排気口の位置を壁出しから屋上上げに変更する場合などが該当します。
交換に比べて工期が長く、費用も高額になる傾向があるため、不調の解決目的とは切り分けて考える必要があります。

店舗運営者が知っておくべきメンテナンスの基本

店舗のダクト環境を長持ちさせるためには、日々のメンテナンスが不可欠です。
グリスフィルターの定期的な清掃や、ダクト内部の油除去を怠ると、排気ファンに過度な負荷がかかり、寿命を劇的に縮めてしまいます。
「動かなくなってから考える」のではなく、定期的な点検を通じて「部品の交換時期」を把握しておくことが、急な営業停止を防ぐ唯一の方法です。

ほとんどの場合で「ダクト交換」の方が良い

「動かない」「異音がする」といった不調に対し、私たちは修理ではなく「交換」を強く推奨しています。
これは、業務用設備特有の構造的な理由と、店舗運営を止めないための「効率」が理由です。

ダクト修理には「限界」がある

業務用換気扇の多くは、過酷な環境下で24時間近い稼働を想定して作られています。
モーターの寿命や軸受けの摩耗が発生した場合、一部を修理しても別の箇所が連鎖的に故障する可能性が極めて高いのが実情です。
現場で一時的に直せたとしても、数ヶ月後に再発して再び出張費や工賃を払うことになれば、最初から交換していた方が安上がりだったという結果になりかねません。

本格的な修理はメーカーに問い合わせてもらうしかない

排気ファンの基板故障や特殊なモーター内部の修理は、現場の工事施工業者では対応できず、メーカー修理となるのが一般的です。
その場合、部品の取り寄せに数週間かかったり、高額な修理費用を提示されたりすることも少なくありません。
メーカー修理を待つ間、厨房が使えず営業できない損失を考えると、汎用性の高い最新機種へ即日で「交換」してしまう方が、店舗経営へのダメージを最小限に抑えられます。

結局、交換の方がトータルコストを抑えられるダクトの修理を依頼すると、まずはダクトの修理を依頼すると、まずは故障箇所の特定、次にメーカーへの部品在庫確認、さらに古い型式だと部品の取り寄せに数週間……と、解決までに膨大な時間と手間がかかります。
その間、排気が不十分な状態で営業を続けることは、スタッフの体調不良や店内の汚れを招き、最悪の場合は営業停止を余儀なくされます。
対して「交換」は、既存のファンを最新の規格品に載せ替えるだけのため、最短1〜2日で全ての作業が完了します。
メーカーとの煩わしいやり取りや、工事の長期化による売上損失を考えれば、交換は最も安く、かつ最も速く店舗を正常化できる手段なのです。

「動かない」「吸い込みが悪い」は交換のサイン

「スイッチを入れてもファンが回らない」「モーターからゴーという異音がする」「以前より煙の吸い込みが明らかに悪い」といった症状は、機器の寿命を知らせるサインです。
特に油を多く使う業態では、ファンの羽根にこびりついた油の重みで軸が歪んでいるケースが多く、これは修理で改善できるレベルを超えています。
これらの兆候が出たら、手遅れになる前に交換を検討しましょう。

店舗用換気扇(排気ファン)とダクトの寿命目安

業務用設備の劣化スピードは、家庭用の比ではありません。
いつ、何が寿命を迎えるのかの目安を知っておきましょう。

業務用換気扇(シロッコファン等)の耐用年数

飲食店で使用されるシロッコファンや有圧換気扇の寿命は、一般的に8年〜10年と言われています。
しかし、中華料理や焼肉店など、油煙が激しい環境では5年前後で異音や振動が発生し始めることも珍しくありません。
この期間を超えて使用している換気扇は、明日動かなくなってもおかしくない「危険な状態」にあると認識しておくべきです。

油汚れによるダクト管自体の腐食と劣化

換気扇本体だけでなく、ダクト管そのものも劣化します。
長年蓄積された油は酸化し、金属製のダクトを内部から腐食させます。
腐食が進むとダクトに穴が開き、天井裏に油煙や臭いが漏れ出し、建物全体の衛生環境を悪化させます。
また、油の重みでダクトの吊り金具に負荷がかかり、脱落のリスクも生じるため、定期的な点検と必要に応じた交換が必要です。

居抜き物件は「開業前」のダクト交換が鉄則

居抜き物件の場合、最も怖いのが、前オーナーが「いつ、どのようなメンテナンスをしていたか不明」という点です。
見た目が綺麗でも、内部が油で壊れかけているケースは多々あります。
オープン後にダクトが故障すると、数日間の営業停止による売上損失が発生します。
開業前の内装工事期間中であれば、什器がないため交換作業もスムーズで費用も抑えられます。
「動くから大丈夫」と過信せず、開業前にリセット(交換)しておくことが、長期的な安定経営に繋がります。

交換を怠ることで発生する火災・異音・悪臭リスク

劣化した設備を使い続ける最大の懸念は、ダクト火災のリスクです。
古くなったモーターの過熱が蓄積した油に引火すれば、一気に大規模な火災へ繋がります。
また、ファンが正常に回らないことで店内に臭いや熱気がこもり、顧客満足度の低下や近隣への悪臭被害(クレーム)を招くこともあります。
交換は単なる「修理」ではなく、店舗を守るための「リスク管理」なのです。

店舗のダクト交換にかかる費用の相場

交換範囲によって費用は大きく変わります。
現場の状況に合わせて概算を把握しておきましょう。

業務用換気扇(排気ファン)のみを交換する場合

最も多いのがこのケースです。
既存のダクト管はそのままに、屋上や天井裏にあるファン本体のみを取り替えます。
費用の目安は、数万円〜35万円程度(機器代+工賃)です。
ファンのサイズや馬力によって変動しますが、ダクト全体を工事するよりも大幅に安く、かつ最も確実に排気能力を復活させることができる方法です。

ダクト管の一部または全部を交換する場合

油漏れや腐食が激しい場合、ダクト管の引き直しが必要です。
一部交換であれば10万円〜、全体的な刷新であれば50万円以上かかることもあります。
ダクト交換は天井解体などを伴う場合があるため、店舗の定休日に合わせて一気に進めるのが一般的です。
ファン交換とセットで行うことで、排気システム全体の信頼性が担保されます。

夜間作業や高所作業による追加費用

ショッピングモール内の店舗や、周囲にオフィスが多い立地では、夜間工事が必須となります。
その場合、深夜割増料金として人件費が1.25倍〜1.5倍程度加算されます。
また、3階以上の高所に排気口がある場合の足場設置や高所作業車の使用も、別途費用が発生します。
見積もりを依頼する際は、こうした「現場特有の条件」を事前に伝えておくと正確な相場が分かります。

失敗しない店舗ダクト交換の手順と注意点

せっかく交換するのであれば、以前よりも快適な厨房環境を目指しましょう。

現在の厨房環境に適した風量の再計算

単に「今までと同じモデル」に変えるのが正解とは限りません。
開業時よりも提供メニューが増えたり、火力が強いコンロに変えたりしている場合、以前の設計では容量不足になっている可能性があります。
交換のタイミングで現在の調理熱量に合わせた「必要風量」を再計算し、ワンランク上のファンを選定することで、厨房の暑さや煙の問題を根本から解決できます。

近隣クレームを防ぐ排気位置の微調整

交換のタイミングは、排気の向きや位置を微調整する絶好のチャンスです。
「最近、隣のビルから臭いについて言われた」といった悩みがある場合、排気口にルーバーを取り付けて向きを変えたり、消臭フィルターを新設したりする提案が可能です。
周辺環境の変化に合わせた対策を盛り込むことで、将来的なトラブルの芽を摘んでおくことができます。

施工後の吸い込みテストと消防点検

交換作業が終わったら、必ず「実際にどれだけ吸っているか」を測定器で確認します。
数値として排気能力を証明することで、万が一の際の消防点検や保健所の検査にも自信を持って対応できます。
私たちは交換して終わりではなく、店舗が安全に営業を続けられる状態であることを最終確認し、エビデンスとして記録を残すことを徹底しています。

ダクトの不調を感じたらすぐに「交換」しましょう

店舗のダクト環境が悪化すると、スタッフの作業効率が落ちるだけでなく、お客様への不快感や火災のリスクまで高まってしまいます。
修理でごまかし続けることは、結果的に店舗の寿命を縮めることに繋がりかねません。
「少し異音がする」「最近煙たい」と感じたら、それは交換のベストタイミングです。
手遅れになって突然の営業停止を余儀なくされる前に、ぜひ一度広積空調工業にご相談ください。


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